ホノユカのブログ

音楽と漫画とFF14を愛するブログ

マッサージ。

 老師の大きく固い指が、私の肌に潜っていく。ぐっ、ぐっと規則正しいリズムで、無理やりに押し込もうとする。油断をすると声が出そうになる。唇を噛み締めるように耐えるが、抗いがたい快楽が止めどなく溢れてくる。

 

 うつ伏せにされたまま、老師が私の脚を開き、腰に手を添えられる。グッと硬いものを押し付けられ、少しだけ声が漏れ出してしまう。

 

 私はきっと堕ちてしまう。涙が滲み、目の前が暗くなっていくように感じた。

 

――――――――――

 

 始まりは職場のパートさんの雑談からだった。私は明け作業に手間取り、絶賛サビ残中。休憩の邪魔にならないように、隅っこで存在感を出さず、代わりに眠気を全面に出して、パソコンをカタカタと打っていた。

 

 パートさんの噂話が始まる。

 

「◯◯さん、本気で嫌なんだけど」
「△△がさー」

 

 大概が悪口陰口である。そういうものである。この職場では若い方に属する私(30前半)はパートさん達に可愛がられ、正規職員の立場でありながらもパートさん達による裏の噂話を聞けるのである。訂正する。可愛がられていない。舐められている。

 

 話は急に変化する。これもお姉様の生態の一部で、(え、どこいった?)と疑問に思えば、あっという間に置いていかれる。川の流れに身を任せるように、そのままを受け入れていく。それが出来なければパート流井戸端会議に参加する資格はない。割と本気でトラブルになるから辞めた方がいい。

 

 今の議題は『加齢に伴う身体の節々の痛み。そのケアについて』だ。お姉様達の平均年齢は還暦前後、無視をできないお年頃なのだろう。この議題はメインテーマになりつつある。

 

 だが、この日は少し雰囲気が違った。唯一の20代女子職員への嫉妬が抑えられなかったのだろう。還暦迎えるワンダフルボディと20代の瑞々しさを、一緒のテーブルに並べ始めた。勝機はなく、正気の沙汰ではなかった。

 

 無惨に敗れ去り、精一杯の怨嗟が込められた陰口と言う呪詛をばら撒いたあと、ターゲットが変わる。

 

「ねぇ。30くらいだったよね」

 

 一人のパートさんの目が私を捉える。

 

「まだ30じゃ、体の事気にしなくても気楽でしょう」
「若いっていいわよねぇ」
「ねぇ」
 
 獲物を見定めた目が順々に私に向かう。典型的な顔は笑っているが、目は笑っていない。ぞくりと背中に悪寒が走る。私は即座に笑顔の仮面を被り、彼女達に迎合する。

 

「そんなことないですよぉ。変則やってるとすぐボロボロになりますもん」

 

 語尾を上げ、語尾に『もん』と付けることは、30代女性2児の母として恥を感じる。だが、これがお姉様たちにはウケる。今も警戒心が緩むのを感じている。このまま勝負を続ける。

 

「足もパンパンになっちゃってぇ。何か良いケア知ってます?」

 

 チノパンの裾を上げ、ふくらはぎを見せつける。

 

「あらま、ちょっと太いわね」
「あらほんとね」

 

 お前らより全然細いから、なんてことは思わず、ふくらはぎを強く摘むと、紫色がしばらく残る。それを見たお姉様様たちは、スッと立ち上がり、私の周りを囲む。ハゲタカに狙われたネズミの心境を知ると、ハゲタカが無遠慮に私の肩を掴む。

 

「あらやだ、岩だわ」
「体固いわ」
「これはやばいわ」

 

 順々に韻を踏んでいく3匹のハゲタカヒップホップの連携に、私は軽く感動すら覚える。だが、実際に酷使を重ね続けた私の肩首は鉄のように固くなっている。

 

「これじゃあ素人には無理ね」
「ごめんねぇ」
「おっぱいが大きい訳でもないのにねぇ」

 

 だははと下品極まりないハゲタカ共の大笑いに、被っていた仮面にヒビが入る。そもそも頼んでもいないのだから謝れる筋合いもない。とは言わないで、やはり“あはは”と誤魔化す。明けでこの状況。私は上手くやっていると励まし続ける。

 

「マッサージと言えばさ、ほらあそこの」
「あそこね。あそこ腕だけは良いからねぇ」
「ねぇ。あそこ行ってみなー」

 

 あそこって何処だよ。と、毒付くことはせずに、ひび割れた笑顔の仮面を再び被る。

 

「え、行ってみたいです! 何処にあるんですかぁ?」

 

 こうして私は、マッサージ屋さんに行くことになったのだ。
 
――――――――――

 

 とは言え。夜勤明けでそのままいけない。シャワーを浴びて仮眠して……。どうしよう。もう行きたくない。でも感想を求められたり、店を見張っていたら……。不安を感じやすい私は、約束を破れない。

 

 せっかくの休日の明け。愛する旦那と子どもはじっかに行っている一人時間。有意義に使いたかった(オンラインゲーム)。泣く泣く出掛ける準備をする。

 

 まぁ確かに身体中に痛みは感じていたし、ちょうど良い機会だったのかもしれない。車でミスチルを流しながらポジティブな思考に切り替える。同じ市内ともあって教えられた場所にすぐに着き、ポジティブは終了した。

 

 全体が黒く塗られた外壁。黄色の看板に赤い文字。若い女性がマッサージを施す写真がデカデカと貼られていた。まず思ったことは、ここは如何わしいお店ではないだろうか。闇営業的な何かで、女性が男性を喜ばせるような、そんなお店だと思った。

 

 車に乗ったまま、スマホで検索する。評価は……高い。そんな馬鹿なと思いながら、詳細を開く。そしてレビューには「腕は良い」「天才的な腕前」など、うちのハゲタカと一緒のことが書かれている。まさかハゲタカが書き込んでいるのか……?とも思えたが、ハゲタカはスマホが使えない。

 

 不安を感じやすい私は、入りたくないという気持ちで染まっている。だって見るからに怪しいお店だもん。でも評価はめちゃくちゃ良い。なら、受けてみたい気持ちも芽生えてくる。そして私は欲に負けた。

 

 車から降りて、勇気を出して店のドアを開ける。否、開けられなかった。予想以上に重いドア。しっかりと体重を掛けて、なんとか開けきる。

 

“ジャララッ”

 

 最初に目に入った光景は、真四角のテーブルを囲む四人の人。テーブルの上で牌を転がし、丁寧に積んでいく。私には麻雀に見えた。つい、信じられないといった目で見てしまうと、一人の男と確かに目が合った。だけどなにも言われなかった。

 

 一度店を出て、看板を見る。確かに「揉みほぐし」と書いてある。雀荘とは書いていないことを確認して、もう一度入る。先ほど目が合った男性が、くいっと目線を送る。その先には、ラーメン屋さんの食券機ような自販機が置いてあった。

 

 自販機には、コースと料金が書かれていた。

“全身50分 2980円”
“全身70分 3480円 お勧め”

 

 など、つらつらと書かれている。なぜ60分がないのか、疑問に思いながらもお勧めの70分を選ぶ。性別は売り切れになっていた。性別は売り切れるのか。

 

 お金を入れてお釣りを取る。その時にふと目に入った。

 

“裏オプション 玉吸い 1980円”

 

 やはりそういう店だった。恐怖に腰が抜けそうになる。だが、既に券は買ってしまった。もう後戻りは出来ない。

 

 ニコニコとした愛想の良いお爺さんに券を渡す。見た目は中国系の漫画に出てきそうな服装をしている。それに160センチもない私よりも、更に小さい。かなり小柄な男性だった。だけど、券を渡した時の手は異常に大きかった。以降この男性を老師と呼ぶことにする。

 

「ツヨイ? ヨワイ?」

「……ヨワイ」

 

 老師の陽気な片言の言葉に、つい釣られて片言で返答してしまう。今更ながら、この店が全体的に中国っぽい。国旗もデカデカと飾ってあるし。まだ麻雀やってるし。

 

「イチバンオク」

 

 と、指さされた場所に行くと、施術台が置いてあり、ようやくマッサージ屋らしき要素が現れてホッとする。遅れて老師がやってくる。手にはお茶を持っている。

 

「オチャオチャ。ポカポカ。リラーックス」

 

 そしてぐいっと飲む。老師が。いやいやお前が飲むん?と疑問に思うが、そのお茶が私に提供されることはなかった。

 

「アオムケ」

 

 言われるままに仰向けになるが、私の経験上では、始めは背中からしかなく、“珍しいな”と思えた。仰向けになって微調整が終わると、顔に蒸らされたタオルが置かれる。口と鼻だけ穴が空いていて、そこから呼吸が出来るようになっていた。熱い。その感想しか出てこなかった。

 

 体にブランケットが被せられる。目はタオルで隠されて老師の行動が見えない為、無言でやられるとそれだけで驚く。老師の次の行動が予測出来ず、心臓のドキドキが早くなる。耳に意識を集中させ、せめて老師の居場所を探ろうと試みるが、全くの無音。さすが老師。

 

 そして老師の手が私に触れる。最初に触れたのは右膝。そしてフェザータッチ。スッ、スッと触れてるか分からない程の柔らかさで膝周りを触り続ける。しばらくそれを繰り返すなか、3480円を無駄にしたと、強い後悔に襲われる。

 

 しかし老師の一言で世界が変わった。

 

「キミツヨイヨー。ウソダメ」

 

 ふぅ、と老師が溜息をつく。がっかりさせてしまった。だけど私は強くない。嘘もついていない。そんな風に内心で憤慨していると、老師の手が膝から内腿に移動する。手の感触が柔らかい指の腹から、硬い感触に変わる。恐らく第二関節。嫌な予感を感じ、口をしっかり噛む。

 

「…………!!!!」

 

 悶絶したくなる痛みが私を襲う。内腿に置かれた指の関節が、膝まで抉るように押し込みながら移動する。それを何度も繰り返す。堪らず腰を捩ってしまうが、老師の片方が、私の腰を押し戻し、更に続けていく。気を抜けば叫んでしまう。次は外腿から膝に掛けて。地獄は続いたが、私はなんとか耐えた。

 

 次はふくらはぎをフェザータッチ。この時、私の思考に変化が訪れた。“もっと強くしてほしい”。そう願う自分がいた。むず痒いようなフェザータッチだけでは……物足りなかった。というより、単純に揉んで欲しい。パンパンなのはふくらはぎなんだし。

 

 というか、初手が膝って変だよね?と今更ながら思う。そして老師がふくらはぎに第二関節を置くと、一気に力を込めて、押す。

 

「……ぉ、ぅ」

 

 油断していた私の口から声が漏れる。痛い。でも、誠に遺憾だけど、気持ちいい。完全に油断した声は恥ずかしく、顔が熱いのはタオルのせいだけではなくなった。

 

 そこからの老師はフェザータッチと関節抉りで、私の体を虐め抜く。パンパンに張っていたふくらはぎに、確かな柔らかさが戻った気がした。

 

「シタムケ」

 

 言われた通りに下を向くように、顎を引く。

 

「チガウバカ、シタムケ」

 

 下を向いたよ馬鹿野郎と思う。だけどすぐに意味を理解する。うつ伏せになれということかと、体を反転させる。老師がふぅと溜息をつく。困らせてごめん。

 

 私がうつ伏せになると、背中をフェザータッチで摩る。少しの間、摩ってから、老師はまた溜息をつく。

 

「キミツヨスギルヨ……」

 

 老師は悲しげに呟いた。私も悲しくなった。すると、老師の手が離れる。うつ伏せでいるから、老師が何をやっているかは分からない。何をするか分からないから、本当に怖くなる。

 

“カラァン”

 

 そんな甲高い音が聞こえた。嫌な予感しかしないが、老師がそれを私の肩甲骨あたりに押しつける。何かは直感で分かった。

 

 木製バット。またはそれに近しいもの。

 

 肩甲骨に置かれたそれは、しっかりと芯が詰まった木製の長物。そんなものを押し付けられたことは、30年と少しの人生で一度もない。だが、感覚だけでそれと分かるものだった。

 

「ガンバル、ダイジョブ」

 

 老師の呟きは、誰に向けた言葉なのか私には分からなかった。麻雀の牌がジャラジャラと聞こえた。木製バッドが私の肩に刺さる。

 

「ぁ……ぅぅ」

 

 あまりの痛さに声が漏れる。心が(やめて!)と叫んでいる。しかし、老師は力を緩めない。押し込まれるたびに、私の口から呻き声が漏れる。もう恥じらいはない。ただ耐えるだけで精一杯だった。

 

「おお……あぁあ、お」

 

 突如、おじさんの喘ぎ声が耳に届く。すぐ近くから聞こえる。

 

「ん…んあぁ」

 

 異常に艶がある声。即座にお釣りを取った時の文字が頭に浮かぶ。これはまさか『玉吸い』か。おっさんは『玉吸い』をされているのか。性別売り切れはブラフだったのか……。一見には見抜けない。

 

「キモチイデショ」

 

 私は激しく動揺した。その声は若かった。その声は語尾が少し上がっていた。その声は……男だった。

 

 お前が『玉吸い』をしたのか。それは、それは高度過ぎるだろう? それとも『玉吸い』とは、私の想像しているような、如何わしいことではないのか。今はこれ以上考えられなかった。

 

 老師のバットが首の横にめり込み、耐えられなかった私の頭が施術台から落とされそうになる。老師の大きい手が優しく、そして力強く私の側頭部を掴み、力づくで押し返す。
 
「……ィディ」

 

 痛いとは言えなかった。でも意思は伝えたかった。すると老師の手が離れる。伝わったことが嬉しかった。助かったんだと安堵する。バットが再び首に当たる。私は心は恐怖に塗り潰された。 

「んあ、っは」

 

 おっさんの喘ぎが、私の声の代わりに室内に響いた。

 

“カラン”

 

 バッドが床に落ちる音がした。老師の両手が私の後頭部に置かれる。緊張が心臓を早く動かす。痛みに備えて。力を入れてしまう。

 

 だが、老師の手は優しく押し込むだけで、確かな快楽に私を導いた。少しだけ感じる痛みが、良い塩梅のスパイスとなる。とびきり甘い果実に少しの塩を振れば、より甘みを強調させる。老師の按摩はそれだった。これを首にやって欲しかった。

 

 老師の手が下に移動していく。私は期待をしてしまう。だが首を通り過ぎていく。がっかり。老師の手は背中の腰付近で止まり、フェザータッチで円を描くように優しく摩る。どうにも痴漢をされている気がしたけれど、きっと老師は真剣なのだ。そう信じたかった。

 

 フェザータッチが終わり、老師の指が私の腰にめり込み。むず痒く不快だった感触から反転した感覚に、私の身体は耐えきれなかった。

 

「いっ……つぁ」

 

 私の声が普通に出る。それが老師に届いたのか、一瞬、力が抜かれる。だが本当に一瞬で、すぐに押し込まれていく。ぐっ、ぐっと規則正しいリズムに乗って押し込まれていく。痛みを我慢し、唇を噛み締める。だが、少しだけ感じる気持ち良さ。骨が喜んでいる。そう感じた。

 

 気持ち良さが分かったところで、老師の動きが止まる。そして少し離れて、私の足側に移動した。おもむろに脚が開かれる。そして老師の片方の手が私の腰を掴む。固い棒が背中と腰の間に触れる。一気に押し込まれる。

 

「ぅぅう」

 

 再び呻き声が漏れる。だが、正直気持ちよかった。確かにほぐれていく。だが、老師の棒がグリグリと捩れを加えられると,単純に痛いだけだった。

 

「ああぁ、あぁ、っはぁ」


“ジャラジャララ”

 

 おっさんの喘ぎ声と麻雀の音。あまりにも斬新なBGMに私の呻き声が小さく混じる。無性に悲しくなってきた。少しだけ泣いた。この空間に笑顔を作る人はいなかった。

 

“チチチチ、チチチチ”

 

 小鳥の鳴き声を真似た機械音が鳴る。やっと終わった。

 

「ふぅ……」
「フゥ……」

 

 老師と私の溜息がシンクロする。最後の最後に気持ちが通じ合った気がした。

 

「スワッテ」

 

 言われた通りに施術台から足を下ろして、そのまま座る。整体や揉みほぐし屋さんでも、施術後はお決まりのアレがある。肩たたき。これが私は好きだ。

 

 老師の肩たたきは、重かった。一撃にズンっと衝撃が奥に伝わっていく。私の体が揺れる。痛い。施術台から落ちないように、お尻に力を入れて踏ん張る。中国武術には発勁という技術があると聞くが、老師は最後まで老師だった。

 

「ハイオワリ」

 

 そこで初めて老師の顔を見た。額が汗で濡れている。短い前髪がペチャっと肌にくっついている。それだけでかなり頑張ってくれていたのが伝わった。感動してしまう。

 

 床には大きな麺棒らしき物が置かれていた。バットではなかった。床に置かれる物を押し付けられたことが分かり、むかついてきた。すると老師が困った顔で少し笑う。

 

「モウヤリタクナイヨ……」

 

 老師は確かにそう言った。“あはは”と私は笑う。私は出禁になった。

 

 店から出て車に乗り込む。いまだに痛む内腿を優しく摩る。鼻を一回すすると、涙が溢れた。ふくらはぎが、すっきりしているのが感覚で分かる。肩凝りが和らぎ、腕が回る。

 

 だけど、割り切れない思いを抱えている。そして思い出す。玉吸いを検索する。想像と違って安心した。だけど、残念と思う気持ちも確かにあった。

 

 やはり煮え切らない。だけどそれが人生。モヤモヤとしたまま帰路についた。

FF14 創作SS。「閣下」

 いやぁ、はは。まさかこんなことになるとは…。

 人生とは、かくも上手くいかないものです。運命は演劇に喩えられるものですが、演出があまりにも悪趣味じゃあないでしょうか。

 どこで間違えたのか。どうすれば良かったのか。物言わず横たわるガイウス閣下を見ると、なんとまぁ現実を直視出来ずに物思いに耽てしまいますね…。


 なぜ私がガイウス閣下を殺したか。


 私は以前ワインポートで葡萄農家をしていたのですが、ちょっとしたおイタが上司にバレてしまいましてね。まぁ憲兵には突き出されず済んだものの、街からは追い出されてしまいました。これからだっていうのに。誠に残念ですよ。


 今更、1人2人くらいでどうのこうのと言うなんて、あの人も保身に走るようになってしまいましたか…いえいえ話が脱線していますね。そんなこんなで仕方なく古巣に戻ろうかと思いまして、幸い、ちょうど戻らないかとお誘いも受けたばかりでしたし、思うところがない訳ではないですが、まぁ元鞘に収まりました。


 それからは持ちつ持たれつといった感じでしてね。適度な距離を保ちながらも、重めな仕事も任されましたし。やりがいもあったんじゃないかな。砂の家に“いつも”いたアレンヴァルドさんとはしょっちゅう飲みにも行きましたし、出戻りにしては横の繋がりも上手くいっていたんじゃないでしょうか。


 …でも言いにくいんですけど、いつもいたって事はあんま仕事貰えなかったんですかね?私は休む暇もないくらい働いてましたけど。なんで雇ってたんでしょうね。いや少し言い方が嫌らしかったですね。


 はっきり言ってしまえば、難民だからってちょっと憐れんじゃってなら、ここはちょっと改善しないといけませんよね。暁って組織としては未熟なんですよ。熟成したワインにはなれない。中身が若過ぎる。もっと私のような経験豊富な冒険者の意見を聞くべきなんですよ。


 あとねぇ…やっぱミンフィリアとアルフィノ。あの2人はねぇ。…ふぅ。


 …帝国から命懸けで救出した結果の報酬なんだと思います?ベスパーベイへの切符ですよ。ははは。信じられます?まさかの交通費!私の命と職場への交通費が同等ときた!


 どう考えても舐めてますよねぇ。暗に「もっと奴隷のように働けよ」って言われてるみたいで頭にきちゃいましたよ。アルフィノはアルフィノで、いっつも口ばっかだし…。あいつが前線に出たの見た時あります?私が知る限りないんだよなぁ。何もしてねぇのに安全なとこから偉そうなこと言って。あれはそのうち痛い目見ますよ。あいつらはだめだ。リーダーとしての才覚がない。ごっこ遊びに興じてるだけの、葡萄ジュースみたいなものです。

 


 と、まぁ多少の不満はありましたけども。冒険者をやりつつ安定した収入があるっていうのは良かった。いや、良いと思ってました。世間を知らないって本当に駄目ですね。世界は広いとは分かっていましたが、まだまだ見識が浅いですね、私も。


 それでですね。ガイウス閣下から直に帝国に来ないかってお誘いを受けまして…シドのついでみたいな扱いでしたが。私、それ断らなかったんですよね。いやいや、もちろん悩みましたよ?というより少し考えました。


 ほら、私って冒険者でしたけど、暁の血盟の専属みたいな感じだったじゃないですか。それって冒険者としての意味があるのかなって考えてしまったんですよ。


 冒険者って結局は個人事業主だから、ある程度は自分で仕事量だったり内容も決める自由がある。そこにはリスクもあったりトラブルも自分で解決しなくちゃいけない。それが冒険者なんです。その代わり夢がある。浪漫がある。好奇心を満たしてくれる。行き場のない力を振るわせてくれる。


 それが暁の血盟という地下組織に属して安定して仕事を貰えることになりましたけど、冒険者の売りの自由がなくなるのと、残念ながらお給料がね。そりゃ一般職に比べればそれなり以上は貰えてると思いますけど、毎日逃がせ殺せの野蛮な世界で、死ぬリスクを背負ってまでするには、かなり割に合わないんですよ。今風に言えばコスパが悪いと言わざるをえないんです。ただの雇われ個人事業主とか、世間一般でも代表的なブラック環境でしょ。リムサの飲食店じゃないんだから…。


 加えてね、いくら国から認められてるとはいえ、所詮は地下組織でしょう。非合法な事をいつの間にかやっていた、って事もその内あるかもしれない。そんな時に暁が庇ってくれると思いますか?どうせアワワワーって慌てるだけで誰も助けてくれないでしょ。いつも尻拭いは人にさせて手柄だけ持っていくような集団ですからね。


 あと、個人的に口だけ上司って嫌いなんですよね。もう分かってるでしょうけど。


 そう思ったら、帝国軍に入るのはそんな悪いことではないのかな、って気がして。だってミンフィリアとガイウス閣下、上司としてどちらが魅力です?軍団長が前線に出張ってくる。自らスカウトに出向く。それだけで勝敗は決しましょう。


 だから「是非よろしくお願いします!」って答えてしまいました。いやいや、勿論そんな空気じゃなかったですよ。閣下もシドも「なに言ってんの?」って顔でしたし。まぁ仮面被ってるからちゃんとは分からないんですけど。それでも何となく分かっちゃうくらいでした。


 帝国軍って前から不思議だったんですけど、どんどん増員されるじゃないですか。いくら殺しても減ってかない。だからきっと労働条件が良いんだろうなとも思ってたんです。安定した正規雇用、豊富な給金、安心の福利厚生、ここらがしっかりしてないと誰も働きませんもんね。ここ、とても大事ですよ。暁には一つもない。


 あとリットアティンさん。あの人、すごく誇りを持った素晴らしい武人さんでしたよね。忠誠心すごいし、何より部下への想い。敵ながら感動しちゃいましたよ。しかも身分も低いところからの成り上がり。ただ、少しばかり実力が足りないくらいで。あんなに心に火を灯して熱く闘ってみたいものです。


 軍人さん達も、暁と比べると一人一人がとても意識が高いんですよね。まぁ正規とバイトくらいの差がありますよ。けどまぁ、暁の参加メンバーの主は、所詮は蛮族です。仕方ないか。


 リウィナさんは…いやちょっとプチ超える力が出ちゃって知っちゃったんですけど、閣下の恋人枠なのかな?ちょーっとそんなシーンが見えちゃいましてね。いやね、私だって見るのどうかと思いました。でも目も瞑れないし、背ける事も出来ないし。ガン見するしか出来ないじゃないですか。…だからなんか二人でしていても強制的にハイデリンが見せる訳で…だから私は悪くないんです。無理やり見せられてたんです。


 ここだけちょっとね、閣下に対して、んー?って思った箇所ですかね。あとは本当に完璧な人でした。あと実力主義なんですよ、帝国の人って。


 本来ならすごく恨まれて当然の私ですけど、実力はガイウス閣下が保証してくれてますし、実績は十分知れ渡ってますからね。味方になってくれるならって、そこまでトラブルになる事なく受け入れてくれたんですよね。


 あとは貴方も知ってるかと思いますけど、グラカンや暁の情報をバンバン流して結果も十分出したし、とうとう幹部になるかなって時ですよ。


 ガイウス閣下に部屋に来るようにさっき呼ばれたんです。あーいよいよ幹部入りの話かなぁって期待してたんですよね。だからここに来たんです。そしたら何でかまたプチ超える力が出ちゃったんですよ。脱いだ服があったから、あーまたリティアさんかと。初めはぼやける感じでしたけど服が脱げ落ちるような音も聞こえたし。ハイデリンさんも意外と俗物だなぁ。とか思ったんですよね。何を聞いて感じて考えれば良いのかなー?


 なんて…。最低ですよね、私。でもね。幸せだったなぁ。無邪気に心を踊らせてね、期待してたんですよ。


 …ティンが目の前にいたんです。


 …いや、目の前にティンがあったと言うべきか。


 …まじでなんてもんを見せてくれんだよ。目も瞑れないし、背く事も出来ない。地獄かよ。ずっとガン見だよ。聞きたくもないし、感じたくもないし、感じたくもない…。私はハイデリンから逆らえなかった…。私の超える力が、筋骨隆々のリットアティンと重なって、肌触りと心が繋がり…私は汚れてしまったんだ。


 え?どっちがどっちだったか…?…貴方の口からそんなの聞きたくなかったよ。もう老齢も老齢でしょう?流石にちょっと引きましたよ。それがアシエンの流儀なんですか、ラハブレアさん。


 と、まぁ世界の終わりを見た気分でしたけど、いや今もそうだけど、なんで超える力が発動したか。何を示唆してるのか。直感で気付けたんです。


…私じゃん!閣下は私を狙っている…!


 ハメられたわぁ…いやハメられてない…。やられ…てもないよ。


 …一杯食わされたわぁ。あーまじ一杯食わされたわー。


 そうだよなぁ…ラハブレアさん、貴方はずっと、光の戦士である私を闇堕ちさせようとしてたもんなぁ。どんな策略より今まででぶっちぎりで効果的でしたよ。え、画策じゃない?いや何笑ってんだよ。もう何も信じられない。世界は広く、そして…怖い。

 

 けど、こうなったらもう殺すしかないじゃないですか。だって自分の身は大事だし。エオルゼア統一とか言い出したんですよ。大いなる野望です。けど裸でそんなこと言ってたら、それは変態でしかないんです。なんでこんな奴をすごい、完璧なんて思ってたんでしょう。


 まぁ良いです。やられる前にやりました。ただこっからどうするか。ここにいたら流石に生きるのは難しいですよね。白を通せるとはとても思えない…。


 …そこで相談なんですが、ラハブレアさんさえ良かったらですが、そいつの身体を返してくれないですか?


 そのイケメンを人質にすれば、また暁に戻れねぇかなって思うんです。ミンフィリアあたり、ホイホイ聞いてくれるんじゃないかな。アルフィノ辺りは渋い顔するだろうけど。まぁミンフィリアが推せばあの坊ちゃんは逆らえませんから。


 え、駄目ですって?いやいや、ここまで酷い目に合わせておいてさ、それは通じねぇよ。良いから返せよ早く。良い加減にしねぇと裏にあるアルテマ破壊すっからな。どうせ死ぬんならひと暴れして、より多くを巻き込んでやるってんだ。


 ハイデリンと手を切るのが条件?ああ分かった分かった、それで良いよ。俺だってもう使いたくねぇよ、こんな力。…ラハブレアさん。ありがとう。助かる。


 …いやぁ、はは。まさかこんなことになるとは…。


 人生とは、かくも上手くいかないものです。運命は演劇に喩えられるものですが、演出があまりにも悪趣味じゃあないでしょうか。悪趣味過ぎるんじゃないでしょうかねぇ。

 

 とりあえずサンクレッドの身体は手に入れたんで、一旦暁に交渉してみようと思います。それではまたお会いしましょう。生きていれば、ですけどね。

 

FF14 創作小説。バッカスの酒。

“失礼します。あなたがグラント様でしょうか?”


 ああ、記者の方ですね。お待ちしておりました。はい、私がグラントです。


“この度はバッカスの酒の再生、バッカスグレープの木の再発見に関わられたと聞きまして。是非一度お話しを聞かせて頂けたら。”


 ふふふ。関わったと言いましても、たまたま見つけたまででして…。本来なら取材を受けるような立場ではないんですけどね。全てはこのような大きなプロジェクトに携わる機会を下さったビルギレント様の功績だと思います。


“グラント様から見てこれから再販されるバッカスの酒、その出来栄えはどのように感じていますでしょうか”


 そうですね…。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、間違いなく今までのワインの常識を覆すように遥かに上回るかと。味、香り、舌触り。全てに置いてです。ただですね、いかんせんまだ準備できる本数が少なく…。一般の方に飲んでもらえるようになるのは当分先になってしまうでしょうね。そればかりが残念でなりません。


“かなりの自信があると伺えますね。グラント様はどうしてワイン作りを始めたので?”


 私ね、実は少し前まで冒険者だったんですよ。自分で言うのもなんですが、そこそこは期待されていたルーキーでしてね。それこそエオルゼアの平和を支えるような仕事もしていたんですよ…。


 あれ?…はは、信じられないって顔してますね。ふふふ、まぁ兎も角ですね、重要な依頼を失敗してしまいまして。信じてた仲間からも失望されました。
 
 …いや、どうかな。私の代わりが見つかった、という事でお役御免と言った方が良いかもしれませんね。私が果たせなかった依頼を代わりに片付けてくれた人がいましてね。それからは皆そっちに夢中でした。


“……”

 

 …ぐぅう…ああぁ、駄目ですね。今だにこの話をしますと頭が痛くなってくる。…どうでしょう、そこのベンチに座ってゆっくり話しを聞いていただけないでしょうか。


“…え、ええ。お願いします”


 快諾ありがとうございます。そろそろこの思い出とも決別したくて。今日、記者さんが来ると知り、どうにか聞いて欲しいと思っていました。


 それで…ああ。トラッハトゥームさんが私の代わりになったところからですね。トラッハトゥームさんのことはご存知です?


 そうそう、あの英雄トラッハトゥームです。彼すごいですよね。ものの数年ですっかりと有名になってしまいました。本当にすごいものです…本当に。


 …私ね、実は彼と面識があったんですよ。初めて会った時は、嘘ばっかだし、卑怯な勝負ばかり挑んでくるので、内心見下してたんですよ。ただね、それは振りだった。私が依頼を失敗して殺されそうになった時にね、颯爽と現れてあのタイタンを力だけで捩じ伏せたんです。いや、彼風に言うならタコタンか。私が何をどうしようとびくともしなかったのにね。今思えば、私の力を測るのに道化を演じていたのが分かりますよ。


 それからですね、傷も癒えて現場に復帰したんですが、誰も私を見てくれないんですよ。みーんな新たな英雄のトラッハトゥームに夢中だ。虚しかったですよ。そう、虚しかった…。ただ一度の失敗で、居場所が消えてしまったんです…。


 …それまで!それまであちこち世界中を飛び回ってきたのは私だ!命懸けで暁の依頼もこなしてきたのに…!世界のためだと仲間と協力して…!


 …すいません。少し熱くなってしまいました。ともかく、より強い者が現れたら、もう用済みになるのが冒険者なんです。


 ふふ、笑っちゃいますよね。当時はあちこち行かされて面倒くせぇな、なんて悪態付いていたのに。いざ何も頼まれなくなると、寂しい、と思うなんて。


 あの頃の私は、その…とても面倒なやつでしてね。誰彼構わず突っかかって、そこらで喧嘩して、金があれば酒と女に溺れて…。その内、本当に誰もいなくなりました。


 そんな時です、ビルギレント様から声を掛けて頂いたのは。彼はこう言ってくれました。


「そんなに酒が飲みたいならワインポートで共にワインを作らないか」


 と。初めは疑ってかかりましたよ。そんな都合良い話があるもんか、普通はそう考えちゃいますよ。でもですね、ビルギレント様は本気でした。曰く、絶滅したと思っていたバッカスグレープを発見するような、そんなワインの神に愛されてるやつをみすみす見逃してたまるかと。これは慈悲ではない、ビジネスだと。そう仰ってくれたんです。


 嬉しかった。まだ私を必要としてくれてる人がいる。それが堪らなく嬉しかった…。


 本当はですね、バッカスグレープを再発見したのは私じゃないんですよ。本当の発見者は、ここからもっと南の方に小屋を建てて暮らすような、変わった人でした。顔も名前も、もう覚えていませんが、その人が本当の発見者なんです。その時はお互いワインなんかの知識もなくてですね、たまたま使っていた葉っぱがバッカスグレープだった、それだけです。それを私がたまたま依頼と同時に持ち帰ったのです。


 …私は1人で何も成し遂げてないんですよ。だからこそワイン作りに没頭しました。私を必要と言ってくれた人へ恩義を返す為に。何かを成し遂げる為に。長くなりましたが、それがワイン作りを始めたきっかけですね。


“…その、なんていうか、壮大過ぎてとても“


 信じられない、そう言いたいのですか?


 ふふ、面白いことを仰りますね。…そろそろ茶番は終わらせましょう。記者さん、あなた、本当は暁の手の者でしょう?こちらの経緯なぞ知っている筈です。


“…なっ!?”

 

 …何故?私にはちょっとした特異体質がありましてね。見えてしまったんですよ、あなたの過去が。今はあの銀髪の坊ちゃんが率いているんですね。もしかしてミンフィリアさんは逝きましたか?


 …そうですか。…ふふっ。…ああ、いやいや気にしないでください。それで私にどういう用でして?


”…先日トラッハさんが蛮神ガルーダと交戦、討死にされました。もはやエオルゼアで蛮神に“


 ちょっとちょっと!トラッハトゥームさんが!?あの英雄が死んだ?…うわぁ…世界は広いなぁ…。


 …ああぁ、ああ、なるほど。それで私に。つまり、『元』英雄に白羽の矢が立ったと…。


 はぁっはっはっは!…笑い事じゃないって?こんな愉快な事が?笑い事じゃないだって!?私を勝手に見限った連中が死んでいき!残った残党が見限ったはずの私に助けてくれと抜かしてくる!こんな愉快な事はそうそうないですよ!生きてきて良かったとさえ思える!まさに!こんな上等な喜劇を演じられるなんて!


”喜劇なんかじゃ…!世界が危機に瀕している!今戦わなければここにも戦火が及びます!”


 ワインポートの為ならば、今一度剣を振るい、盾を構え、私の持てる全ての技を繰り出して住民を守りましょう。その為に命を失っても構わない。本望だ。しかしですね、世界の為になんて、命を無駄にするつもりは微塵もありません。


 …大体ですね、世界の危機という割りにまだまだ余裕あるじゃないですか。


“そんなこと…!”

 

 え、そんなことない?ではなぜ面識も繋がりもないあなたが私の説得に来るのです?世界が危機に瀕してるんですよ?そして私にしか解決出来ない案件だ。文字通り世界の命運を左右する、とても大きな交渉になるでしょう。


 なのに来るのは下っ端の小間使い。組織のトップが来るのがせめてもの筋でしょうに。相も変わらずリーダーの座にふんぞり返って何か勘違いしてるじゃないですか。余裕がないなら余計なプライドなんて捨てて、今までの振る舞いをまず謝罪に来いと言いたいですね。


 まぁ、あなたに言っても仕方ない。直接言いますよ。本当は話なんてする義理もありませんが。リンクパールを貸してください。


 …え?…ない?…っち、どこまで舐めてんだよ…。ああ、失礼。ですが、余りの思い上がり振りにイライラしてしまいまして。…申し訳ない、協力は出来ない事をお伝えください。


 とは言え、お土産が何もないんじゃあ、貴方も格好がつかないですよね。


 こちらのワインをお渡しします。…本当はバッカスの酒が無事に販売出来たら、ここの皆と一緒に飲もうと楽しみにしていたんですがね。なに、事情を話せば皆分かってくれます。


 上手く売れば5千万ギルにはなるはずです。当面の軍資金にでも当ててください。もちろん味も保証しますよ。売るも飲むもお任せします。ですが、これで私と暁の関係は全て解消と、そうさせて頂きます。では、話を聞いていただきありがとうございました。『取材』はここまでで…。


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 そう言い残し、暁の元英雄グラントは葡萄畑の奥に消えた。後は追えない。無闇無策に追いかければ簡単に殺されそうだ。


“5千万のワインかぁ…”


 このまま暁に持ち帰れば、説得に失敗したとはいえ、5千万ギル分の働きをした事にはなる。なるにはなるが、懐に入ってくるのはせいぜい千ギルだ。持ち逃げの考えがどうしたってちらつく。5千万ギルなんて一生働いても稼げる額じゃない。


“…無理だなぁ“


 逃げ切れる訳がない。腐ってるが凄腕が揃う集団だ。新米の俺なんて数日もせずに捕まるのがオチだ。結局選択肢なんてない。依頼失敗を報告、ワインを渡す。それでいつもの気楽な毎日に戻れる。


 …待て。グラントは発見者は別にいると言っていた。ここまで話が大きくなっているのに、顔を出さないなんてあり得るのだろうか。名前も顔も覚えていない。たまたまバッカスグレープの葉を使っていた。そんな偶然が本当に?


 もしそいつが、まだバッカスグレープの葉を持っているとしたら…。バッカスの酒の量産に成功したら。ワインポートの評判はガタ落ちだ。あの狂人の英雄が放っておくだろうか…?


 …やめだやめだ。この案件は俺の手には余る。俺の役目はこの酒をボスに届ける。それでもらった端た金で酒飲んで女を抱いて寝る。それで良いだろう?


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 それが幸せと気付いたのは、遠くなる意識の中、埋められていく体を他人事のように見ながらだった。

 

 

 

 

 

私の中の椎名林檎を紐解く。

 椎名林檎さん。歴史を築いた生きる伝説的なシンガーソングライターと言えば良いのか。90年代から今までずっと最前線で活躍されている、文字通り日本を代表するアーティストです。

 

 紐解くと題しましたが、正直言いましてそこまで知識を持ち合わせていません。ただ、私が感じている椎名林檎の魅力を語ってみようと思います。では書いてみよう。

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報酬は入社後平行線で、東京は愛せど何も無い

リッケン620頂戴。19万も持っていない御茶ノ水

マーシャルの匂いで飛んじゃって大変さ。

毎晩絶頂に達しているだけ。

ラット1つを商売道具にしているさ。

そしたらベンジーが肺に映ってトリップ。

 

 ご存じの方も多いと思います。すでにカラオケのスタンダードとして愛され続けている「丸の内サドスティック」の冒頭です。意味分かる人は楽器をやった事がある人だと思います。

  • リッケン620
  • マーシャル
  • ラット
  • ベンジー

 はっきりメジャーではない用語がバンバン出てきていますが、メロディセンスに優れているので歌いやすいのは勿論、どこかメジャー路線の音楽を無意識に見下す癖のある一定数の捻くれた音楽通がニヤニヤしてしまうような用語を入れる事で、そういう層も味方に付けれたのではと思います。

 

 リッケン620とはリッケンバッカーというギターメイカーのギターの定番種類です。歌詞では19万も持っていない御茶ノ水とありますが、御茶ノ水は楽器屋さんが多く、ギターやベースを買う人が訪れることが多かった地域です。ちなみに19万とありますが、今は40万はするでしょうね…。

 

 マーシャルはアンプです。エレキギターのスピーカーと言えば良いのか、音を大きくするやつです。ラットは踏んでギターの音を変えるやつ、ベンジーは人口僅か15人の村長さんです。

 

 歌詞として取り上げるべき内容はもう一つあります。歌文学的且つ官能的であり、それなのに難解過ぎずエンタメに富む独創的な歌詞。椎名林檎の世界観を感じやすい代表的な特徴かと思います。

 

 「報酬は入社後平行線で」、という現代まで続くような夢のなさを感じられ、東京に何もないと言ってしまう、何を求めているのかが分からない状態。日本で東京以上に物流がしっかりしている場所はないと思います。しかも当時はネット配送も今ほどしっかりしていない。それなのに、東京には「何もない」と切って捨てています。雰囲気や常に入れ替わっていく人々。日が変わっていけば街並みも変化していく。物を求めていなくても目に入るものや肌で感じるものは、常に変わっていく。東京を愛しているのは、こういう部分だったのかなと、私は解釈しています。

 

 「毎晩絶頂に達しているだけ」。文学的に想像しながら読めば、不特定多数の男性に抱かれて毎晩オーガズムに達している、という文に読めます。ふしだらで艶めいていて、性的に奔放な椎名林檎像が浮かび上がります。ですが、私は少し捻くれた解釈を交えたいと思います。

 

 大きい舞台、多くの人の耳目が集まる中で、注目を一身に浴びる。ゾクゾクっと一気に湧き上がる高揚感。ドーパミンとエンドルフィン、オキシトシンが脳から溢れる瞬間。それはまさに「絶頂」と呼べる体験と同等のものです。ライブ後のアーティストが妙に艶やかな表情だったり、全てを愛せる状態になっているのは、こういう事情だと思っています。

 

 ただし、後の歌詞で出てくる「青噛んで熟って頂戴」というフレーズでも分かるように、性的な用語をわざと分かりやすく散りばめる、官能的な演出でもあったりします。「青噛んで熟って」は言い換えて「青姦で逝って頂戴」になるのは簡単に読み取れますよね。つまり外での情事で性的に逝かせたい、そういう意味になります。だから文字を当て字にして意味をずらす(バレバレだけど)という手法を取っているのかと思います。

 

 さらにこの裏にあるのは「青噛んで」は、青い青春時代の少女から熟した大人になる瞬間を表現しているだと思います。終電で帰るってば、池袋。というフレーズもまだ性的に初さを匂わせていて、前述した絶頂の部分の歌詞にも当てはまりやすいです。

 

 ダブルミーニングというのか、叙述トリック的というのか。非常に取っ付きやすくも奥が深い、上等な官能小説を読んでいるような一節ですよね。

 

 僅か数行の歌詞でここまでの情報量を積み込む「丸の内サディスティック」。こんな官能的で刺激に溢れ、文学的な歌詞の曲が、世代を超えて愛され続けています。

 

 豆知識ですが、なぜリッケン620なのか。一緒に出てくる浅井健一(ベンジー)と言えば、テネシーローズのグレッチの姿が目に浮かびます。現にグレッチでぶってってお願いしています。ですが、ベンジーの愛機としてリッケンバッカーの620が実際に使われてもいるのです。むしろグレッチが定着するまではメインだったのかも…?

 

久しぶりに高難易度に挑戦。

どうも。こんばんは。ホノユカです。

 

最近はサブの補助部下ばかりでプレイしています。緩めに無理なくやっています。

 

ですが4月から零式1層くらいはやってみたいなって思いが沸々と沸き始め、武器ないし極やってからかなと何となく思っていました。

 

それで極エヌオーを攻略開始。久しぶりに賢者での攻略。BHでの高難易度はPHとはまた違う大変さがありますが、賢者は反射的に動けるから助かっています。ほぼ詠唱ないし。

 

やっぱり高難易度は楽しいなぁと思いながらプレイしています。ノーマルではないスピード感はハラハラしますし、死んだら終わるという圧力は怖いですが、それでも攻略しているという充実感はありますし、少し理解が深まるとそれだけで達成感もあります。

 

それでも。野良だと警戒心は拭えず発言は控えてしまいます。相談をしているのを眺めている、自分だけ確認するという、チームプレイとは離れた場所にいることを実感します。

 

色々と制限があるなかで、付き合ってくれる身内の皆様。失礼なこともしてしまいがちですが、今後ともよろしくお願いいたします。

漆黒・暁月を振り返って。

久々にFF14の内容です。

 

現在、HonoYukaは完全にお休みして、サブキャラメインで遊んでいます。

 

それで先日暁月の6.0を終えましたので、やり直して見えた今の感想を書いてみたいと思います。実はメインの時はみんなに追いつきたい一心で、結構な頻度でスキップしてたから、細部を知らなかったりしました。

 

漆黒は本当に感情を揺さぶられます。出会いと別れ。光と闇。相対して混ざって、大きな感情に昇華していく。それが本当に効いていて、何度も涙が出ました。

私的に感動した箇所。

・水晶が悪者演技をネタバレされてるところ

・セトとアルバート

・アルバートの魂を持っていくとこ

・指パッチン

どうでしょうか。同じようなところで感動した人は多そうですよね。それとラハを迎えにいくシーン。最高っす。

 

暁月は今までの総決算。やって思ったのが、一個のクエストが結構な割合でムービーも含むので、めちゃくちゃ時間が溶けていく。そして濃い。

 

随所に「どうするんだ?」って謎も多くて、ストーリーを気にさせる。そして戦争が終わる章ですが、終戦処理がとんでもなく重い。いや、そりゃそうだよなぁ。自分たちには使えない未知の力を使う野蛮人が、自分たちの国に踏み入ってきたら、そりゃあ怖いよね。バンバン人が死んでいく。重く苦しい。本当にガレマルドは辛い。

 

と思ったらラザハンの終末はもっと辛くて…。メインのt時から思ってたけど、こんなに行きたくないIDは他にないよ。アルカーゾラ族の家族が化け物に変わるシーンを毎回強制で見るの本当にきつい。本当にここ運営のメンタル疑う。絶対メンタルブレイクしてるもん。

 

エルピスはエメトセルク、ヒュトロダエウス、ヴェーネス、それに元凶二人組。物語の佳境に入っていく実感がありました。

エメトセルクの人気がすごいのは知っていますし分かります。ツンデレぶりがパーフェクト。ですが正直に言います。私はヒュトロダエウスの方が好きです。いや、顔が良いじゃん。物腰柔らかくて、いつも余裕ある感じ。好きになるよね。あと声もいいんだ。声?話し方?めっちゃ好きよね。もっと欲しかったなぁ。

 

ハイデリン。あんなん泣くわ。もうさ。切ないし。良かったねってなるし。お疲れ様ってなるし。情緒がぐちゃぐちゃにされちゃうよ。卑怯。ここの運営は泣かせにくると、本当に容赦ない。

 

ウルティマトゥーレ。まぁ初見じゃないから先知ってるから余裕あったけど、やっぱ一人になると寂しくなっていくしね。みんな健気で「らしく」去っていくからさ。

そこにきてエメとヒュのコンビじゃん。やっぱ初見ほどは感動しないけど、いや普通に感動するよう。エメトセルクが本当に、本当に良い激励をしてくれるんですよ。最高だよ。

 

で、終焉倒して最後にゼノス。彼は本当に本質しか見ないよね。邪魔は全て邪魔でしかない。好敵手というと軽いけど、最後は本当に「友」だったと思う。主人公=プレイヤーでもあるから、主人公に本質なんてないけれど、1番深く理解できていて、それを提供出来たのはゼノスだけだったのかも。

 

それで暁、解散。読後感の素晴らしい小説を見ていた気分。「暁月のフィナーレ」、暁の最後を本当に良く表現してる。

 

本当に良い体験した。

 

黄金はこの二つと比べられがちで、確かに私も少し辛い評価をしているけど、黄金が漆黒と暁月より面白くなる事ってかなり難しいと思う。だって物語の終盤ら辺で感動のカタルシスを解き放ってる最中の物語と、物語序盤で伏線や謎を散りばめている最中の話を比べたら、公平の批評は出来てないと思う。

 

という事で締めくくります。

 

小説を書く理由

小説書きを再開しました。とりあえず1作だけでも完結させてあげたい。

 

小説と言うと、とてもなんか大きいものを感じますが、今はあちこちに無料でアップロードできるサイトが溢れ、誰でも小説家になれます。スマホがあれば誰でもチャレンジ出来るお手軽さも魅力ですよね。

 

私が初めて物語を作ったのは、まだ10代の頃。作詞作曲の息抜きで書いてみました。それから「小説家になろう」という流行りが出来て、一度載せたことがあります。就職をして辞めてしまいましたが。今思えばただ作った歌詞を載せてただけ…。詩集だったかも。

 

もとより何かを表現するという事が好きです。しかし、プレッシャーに弱く緊張しやすく、対面でお話しをして感情を発露する事が苦手です。電話だと顕著にその傾向が出て、吃ってしまう心因的要因による『獲得性吃音』も少しあり、なかなかお話しをして感情を整理するという事が難しいです。普通の人だと普通に会話で完結しているアウトプットが思うように出来ないので、他の方法で出していくしかない面もあります。

 

ただ人っていう生物は、インプットしたらその分をしっかりアウトプットしないと心に負担が貯まります。それがうつ病だったり双極性障害だったり、心の病に繋がっていくのです。なので貯まった刺激や感情は定期的に消化しましょう。

 

と、何も偉そうに人に言える立場ではない、アウトプットが上手く出来ないと日々苦しんでいる私ですが、芸術関係はジャンルを問わずに好きですので、そういう事でアウトプットしたいと常々思っています。

 

お芝居関連や音楽、絵画なんかも興味があって若い頃はよく見ていました。今はお金や時間もなく出来なくなりましたが…。簡単に言ってしまえば芸術関係は基本なんでも好きです。

 

もちろん小説も好きです。とは言え、年に3、4冊程度しか読みませんので。本当の小説好きさん達からすれば、「好きとは?」と問い詰められてしまいそうですが、好きなものは好きなので許してください。代わりに音楽でマウントを取ってもいいのですが、何も実りそうにないですし。マウント返されたらそれこそ救いようのない…。

 

脱線しましたが、私が小説を書くのは、「心の整理をするため」という事。文章を作る事に自信があって、それを認めてもらいたいって承認欲に溢れてる訳でもなく(多少はある)、自分が自分らしくある為の作業です。

 

小説書いてると没頭出来ますし、スマホ一本で出来るし、無料だし。安上がりで自分の妄想を書けば出来るから最高ですよね。あくまで私の生活基盤は子が第一、仕事が第二。趣味はそこまで順位が高くないです。だからこそ良いのです。

 

嬉しい事に何件かDMいただいて応援されたりしています。ありがとうございます。なかには商業化を目指して頑張ってくださいなんて意見も!ものすごく身の丈に合わないような評価をいただき、少し驚いていますが、やっぱり自分が作った作品が誰かの心に刺さるって嬉しいですよね。自信にはしませんが、励みになりました。

 

ただ、今は自分が好きなように書いて、自分が好きだと思える文章に近づけるように頑張る事で精一杯ですし、本当に色んな人の作品見て学んでいる最中です。

 

出来たら同じ現代ドラマのミステリや大人の恋愛もの、リアルな青春ものがあったら教えてください!勉強します!性的な描写があっても全然ありです。ただの行為のあれこれじゃなくて文学的なエロだったらですが。

 

という報告でした。